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2011年3月9日水曜日

もっとも人気なのは欧米で教育を受けた中国人

国内は就職難、中国でも雇用が消えた日本の若者に出口はあるか④
その一方で、母国よりもまだまし、と失業で路頭に迷う欧米人は上海を視野に入れ始める。地元で職を見いだせない香港、台湾の若者の動きも同じだ。上海は今、地元上海の人材に外地からなだれ込む地方出身者に加え、欧米、アジア、そして日本からの人材を巻き込んで、本格的な競争時代を迎えようとしている。
 そのなかで競争力を発揮するのは「欧米で教育を受けた中国人」だ。例えば、金融人材。国際金融センターを目指す上海は、金融の専門人材を先進国から募っており、すでに、上海市は現地に開設されている金融機関を通じて、雇用の拡大を図ろうとしているという。が、その活躍の中心は欧米帰りの中国人だというのだ。
 すでに上海の多国籍企業は、早期から外国での専門的な業務経験のある中国人(=欧米国籍を持つ在外華人)を即戦力として起用している。期待されるのは業務経験のみならず、そのメンタリティで本社スタッフと地元中国人の距離を埋めるという役割だ。
 筆者は03年にソニーチャイナの国際人事課を取材したが、当時すでに、同社は現地で採用した日本人社員は日本人赴任者のヘルプデスク的な仕事だと位置づけていた。同社セールスマーケティング部では現地化を進め、すでにこの頃から日本人ゼロという部門も出始めていた。「現地採用者のみならず、日本本社からの赴任者もよほど自分の価値を高める努力がない限り、早晩、ローカルスタッフにその座をとって代わられる」――。人事課の担当者がそんな警鐘を鳴らしていたのが印象的だった。
 昨今は生産も販売も主軸は中国だとする日本企業は珍しくなくなったが、グローバルに発展をすればするほど、日本人の雇用はなくなるという皮肉な結果をもたらしている。しかも、「3ヵ国語+専門スキル」が当たり前の上海では、すでに日本人は職場でのお荷物とも受け止められてしまっている。「中国語ゼロでも、キャリアゼロ(=新卒)でも現地採用が実現した」、そんな時代は終わったことは言うまでもない。
 このままでは日本人の行き場がないし、ましてや雇用という社会への入り口を失った今の日本の若者に、活躍、発展というあるべき出口もない。そう危惧する反面で、日本人の能力を高く評価する現地の外資系企業も存在したことは、筆者も内心胸をなでおろすものがあった。「○○サンのおかげで、我が社の中国事情は発展した」と青い目の上海社長が評価するその裏には、欧州で生まれたその商品をうまくアジア市場にフィットさせた、つなぎ目として活躍する日本人マネジャーの姿があった。
 日本人に潜在するすぐれた能力とは何なのか。それを再検証し、個人も企業もそして国家も、それを意識して育て養う努力をする時期にさしかかっているように思う。

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